201 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:03/04/02 03:02 ID:hBsxNeQh
些細なことですが、今年の正月に帰省した時。
周りのみんなが席をはずし、75歳になった親父と二人きりになった。
ほろ酔い気分の親父はコタツの上の蜜柑を手に取ると、皮をむきなが
ら言った。

お前を初めて汽車に乗せたのは、脱穀機の部品を買いに町へ連れてっ
たときだった。駅で蜜柑を買ってくれとせがまれたが部品が思った
より高くて金がなかった。帰りの汽車の中で、向かいの席で蜜柑を食
ってる子供をじ一っと見ているお前がかわいそうでたまらなかった。

初めて聞いた。小さい頃の朧な記憶に、雪の降る町で親父に手を引か
れていたことや、遊具のあるデパートの屋上で遠くを見ていたことや、
セピア色の照明と蒸気機関車特有のにおいのする夜汽車がセットにな
ったのが有ったがそのときのことだったのか。
町といっても今では自家用車で30分もあればいけるし、地方都市だか
ら首都圏のはずれのちょっとしたターミナルにも及ばないけれど、
当時は一日がかりだったし、一人で行けたのはやっと高校生になって
からだった。

俺は親父に連れられて初めて汽車で町に行ったことが想い出に残り、
親父は蜜柑を買ってやれなかったことが想い出に残った。

惚け初めているのに、40年も昔の、こんな些細なことをまだ覚えて
いるのが親なんだ。







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