662 名前:おさかなくわえた名無しさん[] 投稿日:2010/01/25(月) 22:15:45 ID:IMSVg4zO
うちの地元の駅前にはデパートがあって、電車を使う時にはいつもそこの駐輪場を利用してる。
ただ、そこは閉店時間(9時)を過ぎると、2つある出入口に腰くらいの高さのチェーンが掛けられてしまうので、遅くなる日は基本的に使わないようにしていた。

しかし、早く帰るつもりだったある日に予想外のアクシデントに見舞われてしまった私はかなり遅い時間に駅に到着してしまい、半ば諦めながらも神の気まぐれか何かによる今日に限った奇跡を祈ったのだけれど、駐輪場には案の定チェーンが。
それでも自転車がなければ自宅まではかなりの距離があるので、なんとか駐輪場から出そうと必死で愛車(重いママチャリ)を持ち上げてガチャガチャと悪戦苦闘していると、眼の前にスッと人影が表れた。
あまりにも唐突だったので思わず仰け反りそうになったが、近くにあった自動販売機の明かりに照らし出されたのは、まだ少しあどけなさの残る高校生くらいの男の子の顔だった。
彼は何も言わずに私の自転車をひょいと持ち上げると、いとも簡単にそれをチェーンの外へと搬出。
僅か一瞬の出来事で、ふう、と彼が一息つくまでのその様子をただポカーンと見つめていると、私の視線に気付いたのか、彼は少し慌てながら「あ…き、気をつけて帰ってくださいね」と、ぎこちなくも爽やかにハニカミながら言って、小走りでどこかに行ってしまった。

紳士の夜明けと言うのか、初々しさの中にも優しげな強さがあって、キュンとしてしまった。
可愛らしい小動物が一瞬だけすごく逞しくなったような、そんな感覚。
神様、こういう気まぐれ、大歓迎です。