220 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2020/08/18(火) 18:32:58.70 ID:M2iMPWCq0
8月の終わりが近づくたびに思い出すことがある

8月30日の朝、ラジオ体操が終わった後に近所の団地の公園に行くとあの子がいる
違うクラスの同級生で、笑うと黒目がちになる女の子
普段は遊ぶこともないけど、8月30日だけは朝から日が沈むまで二人で遊んだ

近所の駄菓子屋に行ったり、別の公園の滑り台を滑ったりしていると風が涼しくなり
街灯がともり始めるころには、団地の公園に夕餉の匂いが漂い始める

二人で並んでブランコに座って、何を言うでもなく8月30日が終わることを惜しむ
その子がブランコを降り、黒目がちの笑顔で「じゃあね」と言う
続いてブランコを降りながら、うん、と小さく応える
走って帰って行くその子の背中を見ながら、また来年かなと帰路についた

9月に入り学校が始まり、バレないようにその子のクラスの前を行き来する
どうやら今日はいないようだと戻る廊下で「えみちゃん引っ越したんだってね」と
初めて知った名前のその子が引っ越したことを知る
どこへ越したのかも、そもそも団地の子だったのかも知らないが、もう会えないと悲しくなった

数日後、長野県の安曇野から手紙が届く
あの子からだった
けろけろけろっぴの便箋には、引っ越しの前日、最後にどうしても遊びたかったと書いてあった
でも期待したような言葉はなく、返事も書けないままその手紙もどこかへ行ってしまった

数年前の8月30日に、その子からfacebookで友達申請が届いた
思い出のあの子によく似た小さな子供を抱いた、黒目がちの笑顔があった
あの時、送らなかった返事を書いた

8月30日、誕生日だったんだね おめでとう