281 名前:1/4[sage] 投稿日:2008/01/27(日) 13:57:19 ID:4pvBZlP1 [1/7]
長文すまん。
昔、役者を目指して劇団の俳優養成所に通ってたことがある。
その時出会った講師の先生が超厳しかった。

・5分前には全ての準備をして、いつでも始められるようにしろ。
・遅刻、忘れ物をするような奴は信用できない。帰れ。
・稽古場に入ったら荷物を一箇所に集めろ。
・ゴミはすぐに拾って自分のポケットに入れ、後でゴミ箱に捨てろ。
・席を立つときはパッと立て。気をつけはキチンと背筋を伸ばせ。
・会釈は15度、敬礼は30度、最敬礼は45度で!
・座面の3分の2に腰掛け、背もたれを使わず腰を伸ばす。
・女子は座った時に股を開くんじゃない。膝をしっかり閉めろ。
・語尾を無駄に伸ばした頭の悪い話し方をするんじゃない。
・「~で~で」とグダグダ話すな。きちんと「ですます」で要領よく。
・おまえらは一般教養もなければ礼儀作法もできていない。
 悔しかったら、きちんと勉強して、せめて人並みになれ。


282 名前:2/4[sage] 投稿日:2008/01/27(日) 13:59:10 ID:4pvBZlP1 [2/7]
こんな行儀や礼儀から始まり、稽古でも厳しかった。

・1日2時間の自主練習も出来ないようなら、さっさとやめてしまえ。
・ミスを笑ってごまかすような人間は、さっさとやめてしまえ。
・台詞を覚える知性も備わっていないなら向いていない。さっさと(ry
・相手役のためにも出来る限りを頑張れ。出来ないならさっさと(ry
・言い訳をして恥じない人間は向いていない。さっさと(ry
・仕事をサボったり手伝わない人間は向いていない。さっさと(ry
・男子は力仕事を、女子は細かい仕事を率先してやれ。出来ないなら(ry
・男子で機械の結線や操作を出来ない奴は(ry
・女子で衣装の裁縫仕事や差し入れの弁当づくりも出来ない奴は(ry

正直、とんでもないところに入ってしまったと後悔した。
体育会系には全く縁のなかった自分には本当に苦痛だった。
ここまでうるさく厳しいと、本当に続々と生徒がやめていく。
入ったのは28人ぐらいだったが、前期で8人がやめていった。

後期になると、より厳しさは増して行った。
卒業公演の前など毎日のように怒鳴られた。
結局、卒業公演まで残ったのは、俺を含め18人だった。


283 名前:3/4[sage] 投稿日:2008/01/27(日) 14:00:36 ID:4pvBZlP1 [3/7]
卒業公演を終え、そして劇団研究生の選抜試験で、俺は残れなかった。
こんな厳しい世界でやっていくことなど無理だと思い、
俺は役者の道を諦め、就職することにした。

それから3年後、養成所時代の同窓会をやることになった。
演劇の世界を諦めた俺は気が重かったが、仲間に会いたくて行ってみた。
同窓会に来ていたのは、卒業公演まで残った18人全員だった。
お互いの近況報告や思い出話をしているうち、話題は先生のことになった。
「鬼のように厳しい先生だったよなー。毎日、地獄だったよ」と言うと、
「え? あんなに優しい人いないよ」「わかってないよ、おまえ」

・自分から相談に行けば、2時間でも3時間でも付き合い、真剣に話をしてくれた
・家族のことでも相談に乗り、病院を紹介してくれたり、役所の制度を教えてくれた
・酔って暴れて警察に保護された時、真夜中なのに先生は来てくれて、
 警官に何度も何度も頭を下げて保釈手続きをしてくれた
・アトピーが酷いのを見て、アトピー治療の専門病院に紹介状を書いてくれた
・途中で辞めた子が介護の勉強で某派遣会社に通おうとしたのを真剣に止め、
 公的な訓練所を調べてくれて、手続きの仕方などを教えてくれた
 (その子はきちんと介護の上級資格を取り、公的施設に就職している)
・途中で辞めて料理人になるといった子に、有名なフレンチレストランを紹介
・途中で辞めた後、サラ金地獄に落ちた子の話を聞きつけ、債務整理の弁護士を紹介した
・卒業後、酔っ払いを車ではねた卒業生のため、最後の示談まで相談に乗った


284 名前:4/4[sage] 投稿日:2008/01/27(日) 14:02:36 ID:4pvBZlP1 [4/7]
俺は全然知らなかった。怖いと思って、先生を避けていたのだから。
個人的に相談に行くなんてとんでもないし、下戸だから飲み会にも参加しなかった。

「先生も誘ったんだけどさ、俺が行くとおまえら緊張するから、
 おまえらだけで楽しく飲めばいいよって遠慮しちゃってさ。
 あ、それから… おまえのことも心配してたんだぜ。就職できたのかなって」
「え… 俺なんか出来が悪かったから、そんなことないだろ」
「おまえ、ホントわかってないよな。
 今さ、就職して会社で行儀や礼儀で困ってないだろ?
 優しい人じゃなかったら、あそこまでうるさく言わないよ。
 俺たち、あんなに素晴らしい大人に会えて、幸せだったんだぜ」

俺は泣いていた。
劇団に残れなかった時も出なかった涙がとめどなく流れた。

今度、先生を囲んで飲みに行ってくる。
そして、今度こそちゃんとお礼を言おうと思う。

長文すまん。誰かに聞いて欲しかった。


魂の演技レッスン22 〜輝く俳優になりなさい!
ステラ・アドラー
フィルムアート社
2009-04-22