191 名前:前編 メール: 投稿日:2005/07/24(日) 17:38:14
幼い頃、近所の原っぱに作った秘密基地が俺達のたまり場だった。
拾ってきたトタン板や木工所から捨てられた木材などを寄せ集めて作った掘っ立て小屋。
今にして思えば犬小屋以下の造形だったが、それでも俺達にとっては
かけがえのない楽しい場所だった。

秘密基地に集まるメンバーの中にSと言う男がいた。
Sは手先が器用で、実は秘密基地建設も大半がSの手によるものだった。
ある日、秘密基地に行ってみると先に来ていたSが一心不乱に工具をふるって
基地にさらなる増設をしていた。
その日は皆で釣りに行く予定だったがSの「これができたらぜってぇー楽しいぞ。」との言葉に
釣り道具を放り出して増設の手伝いをした。
結局、その日は完成を見ることなく夜を迎え、続きはまた明日となり
皆は完成を楽しみにしながら帰路についたのだった。

翌日、いつもの原っぱに行ってみると、そこはすっかり様変わりしていた。
伸び放題だった草は刈り取られ、何台ものトラックが乗り入れていた。
そして俺達のゴミのような秘密基地は解体され、まさにゴミとして隅にうち捨てられていた。
近所の顔見知りのおっちゃんに聞くと、原っぱは駐車場になるのだという。
話を聞いたSの悔しそうで泣きそうな顔が印象的だった。
俺達の楽しい時間は唐突に終わりを告げた。
それから何日かは、次第に変わっていく元原っぱを見に来ては
言い表せない思いと共に歯噛みをしていたものだったが、次第に足も遠のき
中学入学と共にかつての仲間とも疎遠になり、秘密基地のことは記憶から薄れていった。


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