443 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/12/11(火) 21:38:08.29 ID:nxv0hH7D0
ボクが小学生の頃の事だ。ボクは冬時になると何日も続く晩御飯のおでんが好きじゃなかった
両親と妹、それにおばあちゃん。何日も同じおかずに飽き飽きしていたのはボクだけじゃなかったかもしれない
ある日、おでんを取り分けてくれた母が「もち巾着が足りないけど、誰か食べた?」
おでんに飽きてるボク達だったけど、ボクの家族はみんなもち巾着が大好きだった
おでん続きの食卓で唯一のオアシスがもち巾着だった。そのもち巾着が足りない
普段は誰もが一個ずつ食べられるように、おでんが続いても、一人にひとつのもち巾着だけは追加されていたのにそれが無い
当時ボクの狭い世界で、それは大事件だった。次の日も、もち巾着がひとつ足りなかった。その次の日も
それから暫く経ったある日、台所で晩御飯の準備をしていた母が大根をぶった切りしている後ろでボクは「またおでんが来たな」と思った
ふと、もち巾着がなくなる事件を思い出したボクは、母が入れるもち巾着の数を数えた。5個ある。間違いない
だけど晩御飯の時間になるともち巾着は一人分たりなかった
次の日、ボクは母がもち巾着を追加するとき「明日の分も一個入れて六個にしてみてよ」と言った。
母は何を思ったのか思案顔で鍋を見つめた後、ボクが言うとおり、もち巾着を六個入れた
そして晩御飯、もち巾着は一人にひとつ余りもしないし足りなくも無かった
その日の晩御飯は何の事件も無くいつも通りだったけど、母はどこか「ふふん」と言う表情だったのを覚えている
次の日、またおでんが続くんだけど、母は一人ひとつのもち巾着を取り分けた後
「辛いのがあったらお母さんのと換えてあげるからいっぺんに食べたらダメだよ」と言った
当りは父のもち巾着だった。父のもち巾着からは何か真っ赤物が出てきていた。唐辛子だった
次の日も、母は同じ事を言ったけど、誰にもあたりのもち巾着は無かった。その次も。そして、それきりもち巾着が無くなる事はなかった
ボクは母が入れる唐辛子もち巾着がどうしても食べてみたくなって一度試してみたけど悶絶した。普通の一味じゃない
唐辛子もち巾着を平気で食べられるのは母だけだった
あれから、家族で食べるおでんにはかならず唐辛子もち巾着が入っていると母は隠し味を自慢する。
二回も続けて辛い当りを引いたのは、もちが大好きだったじいちゃんかなって今思う