147 :本当にあった怖い名無し:2010/09/01(水) 17:04:22 ID:1qKslLce0
自分の実家には開かずの倉があった。
普段は施錠してあって入れないのに、自分はそこへ罰の為に母親に閉め込まれたことがある。
真っ暗でカビ臭い倉にドン!と押し込まれ、鍵をかけられた。
自分がどんな悪いことをしたかさっぱり覚えていない。5歳くらいの真冬。
ただその時の寒さ、恐ろしさ、泣いても喚いても母親が開けてくれなかったことへの絶望感だけ覚えている。
だんだん暗がりに目が慣れてきたら、一階の床板が腐り落ちていて、自分の足は藁の湿ったものを踏んでいた。
蜘蛛の巣がびっしりだし、埃まみれの機織り機や行燈、黒い長持ちが幾つも並んでいる。
虫食いだらけの長持ちが、テレビで見たドラキュラの棺桶のように見えて益々怖くて泣いた。
倉は二階建てで、幅の狭い急な階段(梯子段)があった。棺桶のある一階には痛くなくて、自分は二階に上った。
そしたら、二階に人がいた。白い花嫁衣装を着たきれいなお姉さんで、どうしたの?と聞いてきた。
「母ちゃんに怒られて…」としゃくりあげていたら、「風邪引くからこれを掛けてお休み」と自分の着物の上のを貸してくれた。
暖かくなったら、安心して色々お喋りした。お姉さんはもうすぐお婿さんが迎えに来てくれるからここで待っているところなの」と笑っていた。
結局、自分を倉から出してくれたのはお父ちゃんだった。
自分は黄ばんだ古い花嫁衣装を被って寝ていた。手には鼈甲の櫛を握っていた。
倉の二階に人がいるはずもなく、自分がきれいなお姉さんの話をすると、夢でもみたのだろう、と笑われた。
花嫁衣装や鼈甲の櫛は、悪戯者の自分が勝手に倉の中を漁ったのだろう、ということにされた。
でも、自分はあのきれいなお姉さんの白い顔を今も覚えている。
今から44年前の自分の思い出です。





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