206 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2012/05/14(月) 15:31:47.05 ID:5T0FZN9n0
田舎住まいの姑の家には、数匹の猫が居る。

自分が会った時、姑が最初に飼った猫は既にもうお婆ちゃんだった。
玄関から上がったすぐそこ、とか、二階の窓枠の上、とか
猫は彼女のお気に入りの場所でいつも独りで静かに寝そべっていた。

姑の家で彼女に会うたびに、自分はあいさつだけはしていた。
最初は言葉だけのあいさつだったが、数年後にはお腹もなでさせてくれた。
その頃にはすっかりヨレヨレの老猫で、まったく毛づくろいが出来てなくお腹の部分はもう毛玉だらけだった。
前歯も抜けて舌の先が常にペロっと出ていた。いったい何歳だったんだろう?
猫ながら、彼女は年寄りの匂いがした。

ある日、自分ら夫婦と子供とで買い物に出ようと玄関先に出ると、ビックリ、
姑の家のあの老猫が、門柱のそばに座っていた。
ちょこんと。ちんまりと。痩せて、毛並みもザンバラで。

姑の家から私ら夫婦の家までは100mちょっとしか離れてはいないが、ここら一帯は
彼女の縄張りではなく、自分の知っている限り彼女はここらに足を伸ばしたことなど一度もないのだ。
実際、外で彼女の姿を見るのは、私は初めてだった。なもんで、すごく驚いた。
 「○○、どうしたの?」
老猫は、ニャンと雌らしい愛らしい声で少し鳴いて、私の足元にすり寄って来た。
こんなことは初めてだった。と、同時に私はなにか怖かった。
小さい子供の時に感じた老人への恐怖感。あれと一緒。
 「お家におかえり。ね?」
まだ何か言いたそうな顔してる老猫を後にして、自分は家族と車で出掛けた。

彼女と会ったのはそれが最後だった。
後から知ったが、老猫はその晩、姑にも「ニャン」と一言鳴いて家を出て行ったそうだ。
それから二度と帰って来ていない。死期を悟っての行動だったのだと後からわかった。

私みたいなもんにまで一言挨拶をしてから去ろうなんて、良くできた猫さんだった。
そうと分かっていたら、怖いなんて思わずもう少し優しい声をかけて送ってやればよかったと少し後悔した。