623 名前:ゲームセンター名無し[sage] 投稿日:02/05/12(日) 14:27 ID:Fb.uQtcE [1/5]
長文で下手な文ですが、宜しくお願いします。
『思い出に残る常連』

初めてのゲーセンで働いた時、
その店には一人、爺さんのメダル常連が居た。
容姿は腰が曲がっていて歩くのもよぼよぼ、
メダル貸機にお札を入れるのも手が震えて両替が出来ないほど
でも、店員に自ら助けを求める事を遠慮してしまう人。
そんな爺さんを手助けをすると何時も「すみません」と言う表情で小さく2回頭を下げ
通院先から受け取った薬を置いて、震えた手でRアスコットをプレイする
毎回2時間ぐらい遊んだら帰っていく人だった。
先輩の話では開店から居る常連さんだと聞かされた。

暫らくしたら、メダルコーナーに中坊のグループ常連が付き始めた。
店がファミリー向けだったから、しょうがないけど
さすが中学生。元気がよく、店内を走りまくる五月蝿いだけのグループ
悪ふざけで機械の上に乗る事もしばしば…
そんな子供が居る時も、爺さんは一人Rアスコットをやっていた。

ある日、中坊グループのリーダーが「あそこに居る爺さんは何者?」と聞いてきた。
何時も見掛ける爺さんが気になったようで、
俺は「開店当初から居る常連さん、静かにやってる人だから」と告げると
そのリーダーは「へー」と頷いただけ。


624 名前:ゲームセンター名無し[sage] 投稿日:02/05/12(日) 14:27 ID:Fb.uQtcE [2/5]
数日後
メダルコーナーから離れた死角の場所で仕事をしていた時、中坊のリーダーが
「アスコットがエラーで止まってる」と走ってきて教えにきてくれた。
アスコットの場所に行くとゲームをやっているのは爺さんだけ、
リーダーは、別の場所でポーカーを遊んでいた。
機械のエラーが起きても、爺さんは体力が無いから店員に告げに来る事も出来ず、
店員が気付くまで、じっと待っている人だったから
その姿を見て、代わりに教えに来てくれたのだと思った。

ちなみに、この中坊グループはマナー教育をしたお陰で、
注意した事は守る、見てて楽しく遊んでいる、お金を使ってくれるという
お店にとっては嬉しい常連グループになり、
爺さんと一緒にRアスコットをやるようになった。
中坊達は馬がゴールする度に一喜一憂の声を出す
爺さんはあいからわず静かにやっているのだが、中坊の一喜一憂が聞こえる度に
微妙に顔を誇らかせて嬉しい表情をするんだよ。
俺は、この光景が大好きだった。

そんな日も一年近く続いた日、オーナーが別会社と契約した事により
店の閉店が決定した。

その事を中坊グループに告げると「寂しい、遊ぶ場所が無くなる」と声を上げたが
高校受験も迫っていて、塾通いもそろそろ行かないとの事で
次第にグループは店に来なくなった。
爺さんにも「*月には閉店しますので御了承下さい」と告げたが
爺さんは黙って頷いただけで、
それからも店に来て、再び一人になったRアスコットをする日が続いた。


626 名前:ゲームセンター名無し[sage] 投稿日:02/05/12(日) 14:29 ID:Fb.uQtcE [4/5]
そして
メダルコーナーが無くなる日も、爺さんはRアスコットをやりに来た。
最後だから、預けてあったメダルを全部渡したんだよ。
2時間後、爺さんがメダルを持って席を立ったので、なんだろ?と思ったら
メダルを預けに来たんだよ。
預けても意味が無いから全部使っていいのにさ、
でも、爺さんは預けに来た
それは、2時間ぐらいしか遊ぶ体力が無かったんだと思う。
ゲーセンなんてゲーム音が五月蝿い場所で、モニターの文字を見るのも辛いだろうに
それでも爺さんはこの店の常連で居てくれた。
本来なら要らないサインを済している時、
俺は爺さんを見て、この人は誰よりも長くこの店に居る人なんだと
通院帰りに寄るささやかな楽しみが無くなるんだなぁと思ったら
急に胸が締め付けられる思いになって、おもむろに一枚のメダルを差し出しながら
「**様、これを受け取って貰えないでしょうか?」と言っていた。
爺さんは、急にそんな事を言われたので驚いた表情のまま固まったさ
俺は続け様に
「この店を御利用頂き誠に有り難う御座いました。そのお礼として受け取って欲しいのです。」
とお辞儀をしたんだよ。
そしたら爺さんは、小さな声で「ありがとう」と言いながらメダルを受け取って、帰っていった。

俺はその後、多くの場所と人の別れを体験してきたが
あの爺さんの帰っていく最後の後姿が一番忘れる事が出来ない。