821 名前:1/2[] 投稿日:05/01/28(金) 06:16:58 ID:VtDqmJ+i0 [1/2]
近所にあった、鉄条網やフェンスで囲まれた空き地。
そこはしゃがんでしまうと姿がかくせそうなほど雑草が生えていた。

ある日、小学生くらいの子供だけが通れる穴がフェンスに開いていた。
それに気付いた近所の子供達は冒険者気分でフェンスを潜り抜け
空き地に生えていた木の下にグループごとに隠れ家を作った。
違う隠れ家の連中と戦争ごっこをしたり、食料の交換をしたりと毎日が充実していた。

小学生になったばかりの俺の妹も仲間に入りたがっていたが
俺は妹を足手まといだと感じ、絶対に妹は連れていかなかった。
それでも、妹はフェンスの穴をくぐって隠れ家にやってきた。

俺は仲間の手前、妹を怒鳴りつけて家に追い返そうとした。
妹は大泣きしながら一人で空き地を出ていこうとしたが
その時、剥きだしのフェンスの針金に背中をひっかけ
何針も縫うような大怪我をしてしまった。
初めて見る大量の血と生々しい傷口を前に、俺は呆然と立ち尽くしていた。


823 名前:2/2[] 投稿日:05/01/28(金) 06:24:12 ID:VtDqmJ+i0 [2/2]
その時、どこからか一人の爺さんが走ってきて、血の汚れも気にせず
泣いている妹を抱き抱えて近所の診療所に運んでくれた。
そして母親が診療所に俺と妹を迎えにくるまで物凄い剣幕で俺を叱り続けた。

翌日、空き地の前を通りかかると空き地の様子が大きく変わっていた。
道から空き地の全体がよく見えるように草が綺麗に刈られていた。
フェンスの穴に近付くと、妹を助けてくれた爺さんが何をかしていた。
フェンスの穴を大きくし、針金に引っ掛ける事がないようにと
ペンチを使って先端を編みこんでくれていた。
俺達が作った隠れ家は、何事も無かったように今日もそこにあった。

その爺さんが空き地の正面の家に住んでいた土地の所有者で
空き地で遊ぶ子供を毎日見守ってくれていたのだと知ったのは
爺さんが亡くなり、あの場から空き地も爺さんの家も消えた後だった。

20年近く経った今でも、あの時の爺さんの怒鳴り声と怖い顔
そしてフェンスを仏頂面のまま弄っていた姿ははっきりと思い出せる。

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