716 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[良スレ認定] 投稿日:05/01/28 01:35:41 ID:slGWWIOQ0
三十路を半ばにして、今も鮮明に思い出す光景がある。

秘密基地とは少し趣向が違うが、そこは、代々年長の者から
こっそり教えてもらう、秘密の遊び場だった。
村の裏手と線路に挟まれた山の中腹に、堂々と根を下ろす巨木。
その枝には、一番太い場所で、子供がゆうに5人は座れた。
村を一望できる、その絶景。遠く霞む山並。のしかかるような
枝葉の輪郭の果て、どこまでも、高く広い空。

いや、そこから望むのは、昆虫採りの後に昇る朝日であり、
帰宅を急かす夕日であり、真新しい望遠鏡越しの夜空でもあった。
全ての四季、全ての時間が、そこにあった。

いつ頃だっただろう。ふと気付くと、周囲で集まる姿には
自分達よりも年少の者が多くなり、そしてなんとなく気付いたのだ。
ああ、この場所を譲り渡す時が来たのだな、と。

今では、実家に帰るたび、列車の窓からその巨木を眺める。
駆け上った山道の短さや、遊び場の思いがけない小ささに胸打たれながら。
そして、決して近付かない。
そこには今でも、子供達の歓声が谺しているからだ。

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