933 名前: 明けない夜に何をか思わん。 投稿日: 02/04/30 07:39

君が死んで、もう一年が経つ。僕は大人になり、君は子供のまま土に還った。
二十年に満たない人生に、君は何を見出したのだろう。
僕はキキョウの花束を君の下へ置くと、惜しむようにゆっくりとその場を後にした。

最期の最期に、僕は彼女を抱いた。
嫌がる彼女に僕は、「君が好きだから」という、世界で一番汚くて、もっとも卑怯な言葉を囁いた。
その時二人は幼馴染みという関係から抜けだし、男と女、愛し合う恋人へと変わった。ほんの一瞬の間だけ。
そして僕に抱かれたまま彼女は息を引き取り、もう彼女の笑顔を見ることは出来なくなった。死に顔はまるで寝ているようだった。
けれど、じっと彼女を抱いていた僕も、失われていく体温に死を実感した。
母さんが死んだ時、僕はまだ小さかったからよく分からなかったけど、今は、ああ、こういう事なんだって分かる。
それは、言いようもない喪失なんだ。埋めようのない空虚なんだ。
僕の心はもう、涙を流せない。

彼女の両親に彼女の死を告げた時、彼らは彼女が長くないことを知っていた風だった。
彼女の葬儀の日、ならば何故と噛みつく僕に、お義父さんは「あの子が望んだことだから」と優しく抱きしめてくれた。
僕よりも辛かったはずなのに、僕よりも泣きたかったはずなのに。
僕はお義父さんとお義母さんの前で、涙が枯れ、声が尽きるまで泣いた。


934 名前: 君を偲んで涙は尽きぬ。 投稿日: 02/04/30 07:41

しばらくして、彼女の両親から一通の手紙が僕に手渡された。
それは僕宛の遺書だった。
便せん二十枚に渡って、彼女が自分の死について思うことを切々と書いてあった。
彼女はずっと前から書いていたらしい。最初の紙は日焼けして色が変わっていた。
どうして病院に行かなかったのか、どうして僕を遠ざけたのか。
彼女の言葉が、彼女の文章として目に飛び込んでくる。
涙は流れなかった。全てを受け止める義務が、僕にはあったから。

君を抱いて一年。君が死んで一年。
僕は家に帰り、二人分の紅茶を淹れた。
一口啜り、両手で持ったティーカップの、中に映る自分の姿を見た。痩けた頬の、疲れ切った顔をした男が睨み返してくる。
「馬鹿だなあ、僕も」
ぼやきに応え、笑ってくれる君はいない。ただ静かな家の中に、僕の声だけが響く。
一人がここまで孤独だと、君が居なくなって初めて知ったよ。
「本当に、幸せだったのかな……」
不意に、君の遺した手紙を思い出す。
最後の一枚に、一言だけ書かれていたあれは君の本心だったのだろうか。
今となっては確かめる術もないが、僕はそうであったと信じたい。
信じることで、君が報われるというのならば。
信じることでこれから先、僕の無意味な人生が救われるというのならば。

――私は、君に会えて幸せでした。
君の微笑みに、僕は情けない笑いで応える。
――僕は、ずっと一緒にいたかった。

僕らの朝は、もう来ない。




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