249 名前:その1[] 投稿日:04/11/21(日) 03:59:39 ID:ENcUK6Yr [3/7]
三十路手前の若輩者ですが書かせてください。

親父が死んでもうすぐ1年になろうとしている。

享年53歳。お袋の誕生日の直後、親父は他界した。
パーキンソン病からくる嚥下障害が死因に繋がった。
俺が高校を卒業して都会の大学に進学した直後にパーキンソン病を発症した。
最初のうちはその病気の大変さに対する認識が甘かったせいもあってか、
たまに帰省しても家には帰らず、地元の同級生と遊び歩いていた。
ただ、毎年帰省するたびに親父の身体がみるみる弱っていくのが
手に取るように判り、それが切なかった。

親父が発症して6年目。
大学を出たもののフリーターをしつつも悶々とした日々を送っていた俺は、
「このままじゃいかん」と思い、地元に戻ることで何かしらの突破口を見出そうとしていた。
親父は実家で既に寝たきり状態だった。






250 名前:その2[sage] 投稿日:04/11/21(日) 04:00:58 ID:ENcUK6Yr [4/7]
連投すいません
続きます

パーキンソン病は全身の筋肉が硬直する病気なので、
当然、言葉を発する筋肉もうまく使えなくなる。
親父の病気は、日常会話にも支障をきたすほど親父の身体を蝕んでいた。

正直、辛かった。
目の前にいる親父は、俺の知っている親父じゃなかった。
すごく気が短くて、その日に買ってきたおもちゃを、
俺が言うこと聞かないと平気でブッ壊してしまうぐらいの親父とは、
まるで別人の様だった。

そんな親父が、お袋にせがんで、
俺が昔使っていたワープロを押入れから引っ張り出してもらった。
そして俺に使い方を教えてくれという。
お袋は「リハビリにもなるから・・・」と言っていたが、
今にして思えば、満足に会話の出来なくなった親父が、
ワープロを使ってコミュニケーションをとろうとしていたのかもしれない。
それなのに。俺はそれを先延ばし先延ばしにしたまま、
結局、また実家を離れてしまった。
「日に日に衰えていく親父」という現実から逃避するかのように。


251 名前:その3[sage] 投稿日:04/11/21(日) 04:01:44 ID:ENcUK6Yr [5/7]
それから暫くして俺もやっと就職が決まった。
その報告がてら、俺は帰省した。
親父は病院のベッドの上だった。
まさかそれが親父との最後の対面になろうとは
その時は知る由も無かった。
俺は親父に、
「この会社で頑張って一旗あげて地元に帰ってくるよ
だからそれまでは親父もガンガレ」
といった旨の事を、すこし照れながら話した。
すると親父は「おぉう、おぉう」と、
声にならない声をあげながら、泣き出した。
あの時の涙は一体何を意味していたのか。
今となっては確かめる術も無い。

就職してから4ヶ月目のことだった。
仕事場に親から電話が入った。
親父が危篤状態になったとの事だった。
すぐに地元に戻ろうとしたが、
東北と九州ではあまりにも物理的な距離がありすぎた。
結局、九州に向かう飛行機にも乗れず、東京で一泊してから
向かうことになった。

親父の最期には立ち会えなかった。


252 名前:その4[sage] 投稿日:04/11/21(日) 04:02:53 ID:ENcUK6Yr [6/7]
翌日、実家に帰るとお袋がいて、
すぐに親父が眠っている葬儀会場に向かうことになった。
棺の中の親父は、なんだかすごく小さく見えた。

母親は意外にも気丈に振舞っていて、てきぱきと動いていた。
俺は通夜の時は殆ど泣かなかったが、葬式のときはさすがに号泣した。
つーか、ずるいよ、あの演出は。
親父が生前好きだった堀内孝雄の「とんぼ」の演奏をバックに、
葬儀屋の人が、メッセージみたいなのを読むんだわ。
おそらくテンプレに沿った決まり文句の様なものなんだろうけど、
それ聞いてると涙が止まらなくなってさ。
「ずるいよ、ずるいよ」と心の中で叫びながらも、
涙腺の決壊を抑えることは出来なかった。


253 名前:その5[sage] 投稿日:04/11/21(日) 04:04:03 ID:ENcUK6Yr [7/7]
最後です

親父よぉ。
俺には夢があったんだよ。
いつか俺が酒が飲めるようになったら、
親父と2人して居酒屋に行って酒を飲みたいって夢がよぉ。
あんたに色んな話をしてもらいたかったんだよ。
親父が若い頃何をして、何を思っていたのかを。
お袋とどう出逢って、そして結婚したのかを。
他にもいっぱいいっぱい聞きたかったよ。
残念だけど出来なかったナァ・・・。
悔しいよ・・・。

すげー短気で、そのくせ小心者で、
そしてつまんねー冗談ばっかりいってたあんただけど、
俺はあんたの子供でよかったよ。
不治の病と知りながら闘い抜いたあんたを
心から尊敬するよ。偉大だよ、あんた。
そして、ありがとう。

そして今。俺の部屋で小さな写真立てに納まっている親父は、
これ以上も無いくらいの満面の笑みをたたえて俺を見守ってくれている。
明日からも頑張るよ。親父。

長文失礼しました