130 名前:大人の名無しさん[sage] 投稿日:04/10/15(金) 19:29:54 ID:lMdNLr62 [1/5]
小学校に上がるちょい前くらいから近所、といってもお向かいの家の個人のピアノ教室に通ってた。
先生はその家の奥さん。声の感じはアルトだったかな?中年、と言われる女性の中では細くて綺麗な人だった。
ピアノ教室っていってもスタジオがあったりとかそういうのじゃなくって、ホントに個人の家のリビングにおっきなグランドピアノが置いてあって。
うちにも練習用のピアノを両親が買ってくれたけどグランドピアノじゃなくってちょっとガッカリしたな、あの頃はw
年に1回、他の教室と合同で発表会やって、クリスマス会もやったな。
発表会用に個人演奏用の曲練習して、クリスマス会用にも練習して。
徐々にレベルアップしていって、小学校卒業の頃についに教則本が「ソナチネ」になった。
結構昔の記憶だから曖昧なんだけど・・・その教則本に上がれるのはホントになんか、その教室では上級の仲間入り、みたいな
感じですごく当時は嬉しかった。
発表会の選曲なんかも、いつもなら教則本の中から一曲とか、先生自身が生徒のレベルに合わせた選曲をしていたんだけど、
その頃になるともう自分で曲を選んでよくなったんだ。
ドキドキしながら楽器屋に行って楽譜を買いにいったんだけど、その時の選曲が昔から憧れてたシューベルトの「軍隊行進曲」。
音楽にあまり興味のない人でも多分一度は聞いた事のある曲だと思う。
少ない小遣いの中から楽譜を手にとって早速練習を!って思ってた矢先、突然先生の方から「しばらく練習はお休み」って連絡がきた。
近所だからね、なんで練習がお休みになったかすぐ解った。
どうやら先生、体を壊して入院ということになったらしい。
この頃はそのくらいしか情報が無かったので、多分すぐに練習再開だろうな、って思って自分なりに一生懸命軍隊行進曲を練習してた。
でもね、やっぱ難しいんだよね、教えてくれる人が居ないと。
テープとか聞きながら練習してたんだけどやっぱムリ。先生早く教えてよ~って思い続けて1ヶ月。
ようやく先生が復帰して「来週から練習またやるよ!」なんて明るい声で電話をしてきてくれた。






131 名前:130[sage] 投稿日:04/10/15(金) 19:30:31 ID:lMdNLr62 [2/5]
子供心に嬉しくって、とりあえず今まで先生が居なくってもここまで演奏できるようになったんだよ!って意気揚々と
教室に向かったんだけど、いざ先生を前にして弾くとものすごい緊張しちゃって、全然ダメ(⊃д`)
いつもならすごく怒ると怖い先生だったんだけどその日は全然怒らなかった。
逆に「よく一人でここまでできるようになったね」って誉めてくれて、もう舞い上がっちゃったよ。
1回30分の練習時間だったんだけど、ちょっと時間オーバーしても先生は細かいところまで指導してくれて。
終了間際には何かもう結構いい具合に演奏できるようになってんの。
やっぱ先生すごいやって思った。
でも、先生が休んでた半年の間にもう発表会の時期は過ぎちゃって。
「先生、今年は発表会やらないの?」
そう聞いたらちょっと寂しそうに笑った後に、「うん、今年は残念だけど・・・」と語尾を少々濁らせ気味に言った。
「でも、クリスマス会があるから、その時にこの曲弾きたい!」
って言ったら「そうね、じゃあ頑張ってもっとうまく弾けるようにしよう」って約束してくれた。
クリスマスにはまだまだ時間がたっぷりありすぎたけど、先生や皆の前でこの曲が弾ける日が楽しみで仕方なかった。
で、その翌週・・・。先生がまた具合が悪くなってしまったらしく入院しなければならない、と連絡が入った。
さすがにこの頃になるとどうしたものかと心配するようになってきた。
1ヶ月経ってもまったく連絡は来ない。


132 名前:130[sage] 投稿日:04/10/15(金) 19:31:10 ID:lMdNLr62 [3/5]
思い切って母に聞いてみた。
「先生、どこの具合が悪いか知ってる?」
・・・母は少し表情を曇らせて、少し間を置いてから話し始めた。
「先生ね、癌なのよ」
はじめは意味が解らなかった。え、癌って、あの癌?
「前に入院したときにはもう殆ど末期状態だったらしいの。この間1回だけ練習があった日、あれはね、
一時帰宅って言ってほんの少しだけ家に帰れるってだけだったんだよ」
その後少し涙声になりながら母は続けた。
「先生ね、あの時が恐らく最後のレッスンになりますって、連絡もらってたの」
その後わんわん泣きながら先生のお見舞いに行く~!!って喚いたんだけど、ダメだった。
事情が解っても生徒との面会は拒否したらしい。治療で変わり果てていく自分を見せたくなかったらしい。
でもきっと先生帰ってきてくれる、そんな奇跡が起こることを信じながら一生懸命自宅で練習してた。

でも奇跡なんて起こらなかった。
クリスマスを前にして、先生は帰らぬ人となってしまった。
多分先生には自分の寿命が解っていたんだと思う。
それなのに「クリスマス会」の話を出した私はなんて残酷な事をしたんだろう。
悪気無くしかも本当に楽しみにしながら聞いたから、あの時きっと先生はものすごい辛かったに違いない。
知らなかったとはいえ辛い事聞いてごめんなさい先生。
でも、約束したじゃない、クリスマスにはって・・・!
寂しさと悲しさと辛さ、悔しさで通夜は声をあげて泣いた。


133 名前:130[sage] 投稿日:04/10/15(金) 19:31:59 ID:lMdNLr62 [4/5]

それからもう20年経ってしまった。
それ以来私が蓋を開くことの無かったピアノが明日引き取られていく。
さっき久しぶりにピアノの蓋を開いた。あの頃と変わらず綺麗なまま、白と黒のコントラストが美しく見えた。
いつかは母が私が弾いてくれるだろうと調律だけは毎年欠かさず業者の人に依頼していたので、音も狂っていない。
対照的に埃を被り無造作にピアノの上に置かれていた「軍隊行進曲」の楽譜を置いて、久しぶりに演奏してみた。
大分忘れてて酷かった。
先生に聞こえてたらものすごい勢いで怒られただろうな。
でも何とか弾き終わったら、あの頃の事を思い出して最後の方は涙で音符が全く見えない。

結婚はしたけれどまだ子供はいない。
でも、もし女の子が産まれたらいつかピアノを習わせて「軍隊行進曲」を弾いてもらえたらいいな。
そんな風に思った。

長文乱文でスマソです(´Д`)



  1. クラスの可愛い子のスク水の臭い嗅いだ結果。。。
  2. 庭に水撒きをしてたらTシャツ&ショーパンの若い娘が通りかかったので・・・
  3. 看護士の女性陣と合コンやった結果を報告するッ!!
  4. 東北(新潟、青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島)に行って驚いたこと
  5. よく行く映画館のフードコートにいるいかにも ホームレスみたいな人にはお金あげてる